日本での興行は苦戦した映画「ヘルボーイ」

アクション

日本での興行は苦戦した映画「ヘルボーイ」レビュー

(2004年 監:ギレルモ・デル・トロ 出:ロン・パールマン、セルマ・ブレア)

みにくい地獄の子

ヘルボーイは、世界大戦の形勢逆転を目論んだナチス・ドイツ軍が魔界から召喚した悪魔である。混乱の中で連合国軍によって保護され、成長してからは超常現象捜査防衛局(B.P.R.D.)の一員として、人間界で悪さをする魑魅魍魎と日々戦い続けている。ところがその姿はといえば、真っ赤な図体に尻尾付き、チョンマゲ頭からニョッキリ生えた角の切り株、おまけに右腕が石でできているという、極めて悪魔的(当然!)なもの。組織からも「お前さぁ、あんまり外ほっつき歩かないでもらえる?顔怖ェし」と施設に軟禁され、好きな女子にも自由に会えないものだから、いつしか性格も粗野で短気に。ムカツキついでにしょっちゅう牢破り、結果、いらん仕事を増やされた局員から疎ましがられる有様だ。

そんな彼も、育ての親であるブルーム教授には頭が上がらない。異界の脅威として始末されるかもしれなかった自分を引き取り、実の子同然に愛情を注いでくれた教授は、ヘルボーイにとって魔界の何者よりも父親に近い存在なのだ。「その気になれば世界を滅亡させられるほどの力を持った悪魔」という設定と、教授に喫煙がバレそうになって慌てたりする姿とのギャップが観ていて楽しい。

ヘルボーイだけではない。ブルーム教授に育てられたミュータントたち―――水棲人間のエイブ・サピエンや念動発火体質のリズ・シャーマン―――は、外の世界に自らの居場所を見出すことが出来なかった者ばかりだ。「異形として生を受けた事実が変えられなくとも、せめて心だけは人間として育てたい」という教授の理念のもとに集った彼らは、その容姿や破壊的な能力とは裏腹に極めて人間臭く、血の通った存在なのである。悪役として登場するラスプーチン一派の殺し屋・クロエネンや地獄の番犬・サマエルが放つ殺伐とした気配とは対照的だ(『X-MEN』シリーズに登場する「恵まれし子らの学園」と「ブラザーフッド」の対立図式にも類似している)。ヘルボーイが悪態をつきながら敵をぶちのめしたり、リズに想いを伝えられずに悶々としたりする様子を眺めていれば、初登場シーンで「主人公……ブサッ!」と思った人でも、映画が終わる頃にはこのひねくれた腕白童子がたまらなくキュートに見えてくるはずである。

ちなみにヘルボーイ自身が「父親の階段」を上り始める続編『ヘルボーイ ゴールデン・アーミー』(08年)では、物語もヴィジュアルイメージも更なる進化を遂げており、こちらも超オススメ作品。今のところデル・トロ監督からは「三作目の実現は難しい」などと寂しいアナウンスが流れているものの、『ホビット』シリーズの脚本を手掛け、『パシフィック・リム』(13年)を世界的ヒットに導いた勢いに乗って、ぜひ壮大なフィナーレを演出してもらいたいところである。一作目、二作目共に日本での興行は苦戦したようだが、今ならきっと幅広い観客層に受け入れてもらえるはずだ。みんな好きだもんね、「妖怪ウォッチ」!!!

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