サスペンス

『ハロウィン THE END』レビュー!

2022年
監督:デヴィッド・ゴードン・グリーン
出演:ジェイミー・リー・カーティス、アンディ・マティチャック、ローハン・キャンベル、カイル・リチャーズ、ウィル・パットン、ジェームズ・ジュード・コートニー
公式サイト:https://halloween-movie.jp/

※本作はR15+指定作品です

伝染する“邪悪”

マイケル・マイヤーズ。弱冠6歳で殺人童貞をかなぐり捨てて以来、何度捕まっても脱走して故郷のハドンフィールドに舞い戻り、そのつど大勢の人間を血祭りにあげてきた、正真正銘根っからの殺人鬼。時が経ち、爺になろうとも悪のカリスマ性には些かの衰えもなく、ハドンフィールドの住民にとっては邪神にも等しいデモニックな存在である。ジョン・カーペンター監督作『ハロウィン』(78年)から始まった不死身のブギーマンの物語は、その正統続編と銘打たれた『ハロウィン』(18年)と『ハロウィン KILLS』(21年)を経て、本作でとうとう決着の時を迎えた。そしてそれは、か弱いスクリーミング・クイーンから燃える女傑へと変貌を遂げたヒロイン、ローリー・ストロードの長い戦いの終わりでもある。

新章1作目の完全直後型続編『KILLS』では、大ケガのせいで病院に釘付け状態だったローリー。彼女が病床で気を揉む間にもマイケルは街で死体を量産、ついにはローリーの愛する者までもがその凶手に懸かり、命を奪われてしまった。あれから4年、ローリーはセラピーや回想録の執筆を通して人生を見つめ直し、孫のアリソンと共に新たな一歩を踏み出そうとしている。いまだに街の人々との間には微妙な距離があり、中にはローリーこそが災厄を招いた張本人であると面罵する住民もいるが、要塞化された家で独居していた頃からすれば、これでも格段に前向きで温かなシルバーライフ。派手な血しぶきを含む残虐描写が売りのスラッシャー映画において“ダレ場”と評されることも多い日常パートが、ここでは妙に愛おしい。44年前、あのハロウィンの惨劇で一変してしまったローリーの人生。それを再設計するチャンスがようやく巡ってきたのだ、何ならこのまま「ローリーお婆ちゃんの縁側ぬくぬく日記」として引っ張ってもらっても……なんてヌルい提案は、当然ながら論の外。やがて下水道の構内で、地域密着型の悪しき存在が再び蠢き始める。

そしてジャンプスケア効果音と共に現れたるは、馴染みの巨躯に馴染みのツナギとマスクを纏ったブギーマン。しかし、無敵の殺人ブルドーザー状態だった前作までと比べ、明らかに弱体化している。人間として扱うならマイケルももう65歳、年相応にガタが来てもおかしくはない(今までに受けたダメージ量を考えれば、生命維持しているだけでも十分に超人級だ)。だが、そもそも彼は純然たるヒトなのだろうか?あの尋常ならざる打たれ(討たれ)強さや底なしのスタミナ、いつの間にか獲物の背後に佇んでいる神出鬼没のスタイルにスーパーナチュラルな雰囲気を感じさせつつ、マイケルを突き動かす“モノ”の正体を敢えて明かさなかったところにカーペンター版『ハロウィン』のマジックがあった。『ハロウィンⅡ』(81年)以降の続編、ロブ・ゾンビ監督によるリメイク2作品(07年、09年)では殺人鬼のバックストーリーを掘り下げ、行動科学的な分析を試みる動きも見られたが、結句、掘れば掘るほどシリーズ独特の幻想性が薄れてしまった感がある。では、本作はどうか?序盤であれほど弱っていたマイケルが、最終局面でのローリーとの壮絶バトルに至るまでの過程、明快な解説はつかずとも、そこには確かに超自然の力が醸し出す魔法が息衝いている。そして今回初登場となるキャラクターは、シリーズの「曖昧な悪の法則」に新たな不安の種を植えつけた。もしも、白いシャトナー・マスクの内側に潜む“邪悪”に、依り代になり得る他者を嗅ぎつけ、共鳴し、伝染する性質が備わっていたとしたら、たとえマイケルの肉体を木っ端微塵に粉砕したところで、悪夢が終わるとは限らない。とある場面で、TVモニターに『遊星からの物体X』(82年)が映し出されているあたり、単なるカーペンター・リスペクト以上の含みがあるのでは……などと、物騒な想像が膨らむ。

『物体X』や78年版『ハロウィン』へのトリビュートだけでなく、同じカーペンター監督作『クリスティーン』(83年)からの明白なイタダキが多く含まれている点も興味深い。キーパーソンの姓はどちらも“カニンガム”であり、その生活環境や、外見・内面が変化していく描写にも共通する部分がかなりある。両作品共に自動車整備工場が重要な舞台として設定され、瓜二つの追っかけショットまで登場。カーペンターのフィルモグラフィにおいてはそれ程存在感の大きい作品ではなく、カーペンター自身、過去に「(『クリスティーン』には)あまり深い思い入れはない」と語っていた時期もあるが、本作ではこれらの引用要素が、ブギーマンの正体をあれこれ考察するうえでの補助的な役割も果たしており、よくある表面をなぞっただけのオマージュとは段違いに効きが良い。ファンの期待に応えつつ、新鮮な驚きを提供することも忘れないデヴィッド・ゴードン・グリーン監督の手腕には、毎度のことながら唸らされる。

新シリーズが完結し、長きにわたるハドンフィールドの暗黒の歴史にも一旦の区切りがついた。街の未来が希望に満ちたものとなるのか、はたまた陰惨な記憶に囚われたまま衰退していくのか、それは誰にも分からない。土地に根付いた恐怖や疑心は一朝一夕に枯死するものではなかろうし、将来、思わぬ形で復活したブギーマンによって、再び街が蹂躙される可能性もゼロではない(ジェイソン、フレディ、レザーフェイス……今までにどれだけのホラーアイコンが「いくら何でも死んだだろう」というシチュエーションからしぶとく蘇ってきたことか)。これも人気シリーズゆえのお約束、平安はあくまでテンポラリーなものかもしれないが、喪失感ばかりが残されたわけでもない。傷だらけの戦士の傍らには、その身を気遣い、一緒に桜を見ようと優しく誘いかけてくれる戦友の姿がある。いつかその夢が実現したなら……人間の負の感情がお好きであろうブギーマンにとっては、どんな物理攻撃よりも痛いカウンターブローとなるに違いない。

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