アニメ

映画『レゴバットマン ザ・ムービー』レビュー

レゴムービー版バットマン!
カッコ良さとアホらしさの絶妙なバランス

[2017年 監:クリス・マッケイ 声:ウィル・アーネット、ザック・ガリフィアナキス]

ゴッサム・シティで悪と戦うヒーロー、バットマン。派手な活躍で世間の注目を浴びながら、家では万年ボッチの潤いゼロな日々を過ごしていた。一方、「バットマン最大のライバル」を自負する犯罪王子ジョーカーは、バットマンに冷たく突き放されたことで深く傷つき、復讐を決意。悪党たちの流刑地〈ファントム・ゾーン〉から超ワル軍団を召喚し、ゴッサムの乗っ取りに動き出す。新任の市警本部長バーバラに単独行動を禁じられたバットマンは、うっかり養子にしてしまった少年ロビンや執事のアルフレッドらとチームを結成、ジョーカーたちの野望を打ち砕こうとするのだが……。

意外な場所から立ち上った「DC 逆襲の狼煙」

くもりときどきミートボール』(09年)のフィル・ロード&クリストファー・ミラー監督が手掛けたアニメ映画『LEGOムービー』(14年)。全編をレゴブロック風CGアニメーションで描いたこの快作で、主人公を食うほどの強烈な個性を示していたダークヒーロー「バットマン」が、本作ではとうとう主役の座をゲット。イマイチ安定軌道に乗りきれないDCコミックス実写化企画にアニメの世界から活を入れるような、一級の痛快娯楽作となっている。

ノッケから製作会社のロゴをおちょくり倒し、自作の曲をバックにノリノリで悪党を蹴散らしていくバットマン。「自己紹介なんか『LEGOムービー』で済ませたぜ!」と言わんばかりのロケットスタートは、コウモリ戦士映画史上でもトップレベルの爽快感に満ちている。クリストファー・ノーラン監督の参入以降、深刻かつクソ真面目な「闇の騎士」像がすっかり定着した感があるが、これを丸っこくて可愛いレゴキャラが演じれば、マジ度が増すほどバカ度もアップ。バットマン本来のカッコ良さと、奇態なコスチュームを身につけて悪と戦う輩のアホらしさを両立させるというこの試み、絶妙のバランス感覚が無ければ、おいそれと手を出せるものではない。

DCコミックスやワーナー・ブラザーズ関連作品からのキャラクター大量投入、レゴの世界独自の物理法則があってこそ成立するスケール過剰なアクションなど、一見すると「美味しいネタを無造作に全部乗せしただけ」とも受け取られそうな内容だが、ヒーローが抱える心の闇や、誰かを愛する(家族を持つ)ことへの不安など、バットマンを描くうえでのキモの部分はしっかりとおさえてあるのが偉い。むしろ、ひと仕事終えたバットマンが電子レンジで夜食をチンしたり、ホームシアターで独り『ザ・エ-ジェント』(96年)を観ながら大笑いする、といった、実写版では到底お目にかかれない描写を通して見えてくる悲哀が鮮烈である。特に、長年の宿敵ジョーカーとバットマンの愛憎入りまじった関係の描き方はモーレツに馬鹿馬鹿しくも的を射たもので、双方の存在理由が今までにないほど明確に示された名エピソードだ(そういえば、『ザ・エージェント』でのトム・クルーズの殺し文句“You complete me.(君が僕を完全にする)”は、『ダークナイト』(08年)のジョーカーにもパロディ的に引用されていた)。

実写シリーズ化企画ではライバルのマーベル・スタジオに水をあけられ、テコ入れオールスター映画『ジャスティス・リーグ』(17年)でも期待していたほどの評価・興収は得られなかったDCだが、大丈夫、レゴの世界じゃ負けてないから!アニメで功を奏したアプローチが実写版にもまるまる応用できるとは思えないが、意外な活路はどこかにあると信じたい。本作の爆笑台詞「アイアンマンのばーか!」を、単なる負け犬の遠吠えにしてしまわないためにも、だ。

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