本木雅弘&西川美和監督 オーストラリア日本映画祭に ペアルックで登場! 本木雅弘、流暢な英語挨拶を披露!
『ゆれる』『ディア・ドクター』『夢売るふたり』の西川美和監督が、『おくりびと』以来7年ぶりの映画主演となる本木雅弘を迎え、直木賞候補となった自らの小説を映画化する最新作『永い言い訳』(アスミック・エース配給)が現在全国で公開中です。
主人公の幸夫役に『日本のいちばん長い日』『天空の蜂』で昨年度日本アカデミー賞最優秀助演男優賞等を受賞した本木雅弘。その他ミュージシャンの竹原ピストル、池松壮亮、黒木華、山田真歩、堀内敬子、深津絵里など、屈指の実力派俳優が脇を固めます。
先般発表された報知映画賞・日刊スポーツ映画大賞でも作品賞・監督賞・主演男優賞・助演男優賞にノミネート。今年の賞レースを賑わせることが予想され、また鑑賞者の満足度が非常に高くリピーターが続出していることでも話題、ロングランヒットを続けています!
第20回オーストラリア日本映画祭(会期:10月14日~12月4日)より招待を受け、主演の本木雅弘と西川美和監督が渡豪しました。オーストラリア日本映画祭は1997年から始まった国際交流基金が主催する日本映画普及のための映画祭。その規模や動員数は毎年拡大しており、いまやシドニー・メルボルン・キャンベラ・アデレード・パース・ブリスベンの六都市を巡回する世界最大規模の日本映画祭となっています。
本木雅弘は本映画祭には初参加。2009年に『おくりびと』でアジア・パシフィック・スクリーン・アワード最優秀主演男優賞を受賞した際、ゴールドコーストで行われた受賞式に長男を伴って出席して以来の渡豪となりました。西川美和監督は前作『夢売るふたり』に続く二度目の参加。今回、「オーストラリアでの受賞歴もある世界的な俳優と、海外映画祭でも高く評価されている稀有な女性監督を是非招待したい」と映画祭側に熱望され、両名揃っての訪豪が実現しました。
10月27日(日)夜(現地時間)、本木と西川監督はシドニーのイベント・シネマズで行われたクロージング上映後のQ&Aに、竹原ピストルの名前を書いたTシャツ(本木)と、本木の名前を書いたTシャツ(西川)、そして黒のスーツにコアラのぬいぐるみをあしらうという完全ペアルックで仲良く登場。約400人のファンに超満席となった客席は笑顔でふたりを迎えました。
ロンドン在住の本木は、
This film “The Long Excuse” looks into the people’s helpless and fragile state of mind. It’s not quite a dramatic story, but I hope you’ve found some connections with their subtle emotional journey.
(訳:この映画『永い言い訳』はどうしようもなさ、もろさを心に抱えた人々を描いています。およそ劇的とは言えない物語ですが、そんな人々のささやかな心の旅に皆さんが何かつながりを見出してくれたんじゃないかと思います)
と、流暢な英語で挨拶を披露し、客席を驚かせました。
両名は、翌10月28日(月)夜(現地時間)にメルボルン・オーストラリア国立映像博物館での上映後Q&Aにも登壇しました。二都市を巡る短い滞在ながら、「観てくださった方の反応はどの国も共通している。何か通じてくれているものがあるのだと思う」(西川)、「ここでも観た人が身につまされつつもどこか前向きになってくれていると感じる。かすかな幸福感が満足感につながっているようでうれしい(本木)」と作品へのさらなる手ごたえを語り、世界を舞台にこの作品が広く愛されていくことに期待を寄せました。
シドニー・オペラハウス前及び会場での舞台挨拶より
Q:この映画を作るきっかけ
西川:きっかけになったのは、2011年東日本大震災という大きな地震、津波、災害が起き、直接被害にあった方はもちろんのこと、当たり前にある日常がいかにあっけなく失われてしまうかということを実感し、この物語を着想しました。
Q:本木さんは、どんな役作りをされましたか。
本木:This film “The Long Excuse” looks into the people’s helpless and fragile state of mind. It’s not quite a dramatic story, but I hope you’ve found some connections with their subtle emotional journey. (訳:この映画『永い言い訳』はどうしようもなさ、もろさを心に抱えた人々を描いています。およそ劇的とは言えない物語ですが、そんな人々のささやかな心の旅に皆さんが何かつながりを見出してくれたんじゃないかと思います)私自身、非常に自意識が高く、うまくいかない人生を抱えていて、共感する部分が多々ありました。それをそのままフィルムに焼き付けたという形です。この映画は、人間とは誰でも不完全なんだということを認めて愛してくれる映画だと思います。私自身は、物語が示してくれている最終的なゴール、答え、頂けたアイデアにたどり着けるように、という気持ちで演じました。
Q:撮影一日目のことを考えてみて、主人公のキャラクターを完全にとらえた状態で臨んだのか、それとも撮影してゆくうちにキャラクターが降臨してきたのか。テイク1の演技をいまどう思いますか。
本木:もちろん役者としての自分と演じなくてはならないキャラクターの相互の自意識を行ったり来たりするのですが、役者としての自分の芝居にはいつも何か届かないところがあって、正直なことを言えば、撮影初日の方…というよりは、全部もう一度撮り直したいです(笑)。
Q:クリエイターたちの人生というものについて話を聞かせてください。あなた方表現者たちの人生は、半分が「呪い」であり、もう半分は「贈り物」だと思います。それぞれからご自分の人生についてお聞かせください。
本木:おそらく皆さんの人生も、考えてみればその半分半分だと思います。でも、やはり私たちはもともと背負う量というか浴びる量が強烈なので、陰影も強い。世間の仕打ちがキツイ時もあるし、神に守られているなと感じ、天にも昇るような幸福なことが起きるときもあります。私の場合、今日はみなさんの反応次第で幸福度が変わってきます(笑)。
監督:ものづくりに携わっている人間には、こうして多くの方々に拍手で迎えられる日もありますが、机に向かって一人で物語を考えたり書いたりしているときは本当に一人ぼっちで、血の通った人との関係性を考えられない時間も非常に長くあります。脚光を浴びる仕事である反面、非常に孤独で人間関係が希薄で、社会性の乏しい仕事でもあると思います。ですから、私自身もそうですし、こういう仕事をしている人間というのはどこか未成熟な部分があったり、社会経験が乏しく、人間関係も希薄であるところがあるという、他の人たちには想像もつかないようなクリエイター特有の性質を幸夫というキャラクターに反映させました。映画の中の幸夫も大宮家の人たちとのかかわりの中で新たな変化をしていったように、私も、最初は一人で机の上で書いていた物語を、最終的にこうしてたくさんの色々な人生を送っている方々、“他者”に観て頂くことで、ようやく自分の人生も変化してくるんだな、と思います。映画は作っているときはまだ映画ではなく、観て頂いて初めて映画になってゆくんだなという実感を、こういう場所にきて改めて感じることができています。こういうところで皆さんの反応を頂くことで、改めてまた孤独な机に向かうことができるのかな、と思います。
Q:子どもたちの演技が素晴らしかったですが、どのように選んだのですか?
監督:今回のふたりはほとんど演技経験がありませんでした。子供らしさを重視し、泣いてくれと言ったら泣いてくれるという技術ではなくて、彼ら自身がもっている性格や環境がいかに役に近いかで選びました。本木さんは子どもたちとしっかり距離をとりつつ、彼らにとっていなくてはならない「お助けマン」として、現場でオセロをやってくれたり、凧揚げをしてくれたりしてうまく演出をつけてくださいました。
本木:ひとつ言っておきたいのは父親役のシンガーソングライター竹原ピストルさんについてです。今彼の(名前が入った)Tシャツを着ているんですが(と言ってTシャツを見せる)、彼もどんなお芝居をしてくるかわらからない、それがスリリングで私もリアルなお芝居ができました。チャンスがあればぜひ彼の唄を聞いてみてください。なぜ監督が竹原さんをキャスティングしたのかわかると思います。
Q:本木さんへ。『おくりびと』がオスカーを獲ったこと、義理の母が樹木希林さんであること、人生の大きな二大イベントだと思いますが、それが本木さんにとってどんな影響を与えているか教えてください。
本木:『おくりびと』は個人でいただいた賞ではないですし自分が何かをいただいたという感覚はないんですけれども、時代と作品の出会いというものが重要だということを勉強させていただきました。役者としての自分にはハリウッドからお声がかかることもなく、特別な変化はありませんでした(笑)。樹木さんは西川監督と同様に人間への観察眼が非常に鋭くて辛辣ですが、慈愛に満ちている人で、私の心を柔らかく導いてくれる存在です。
Q:本木さんは監督からどのような演出を受けたのですか?
本木: 自分の気持ちを吐き出す鍋パーティーのシーンがありまして、普段の私はもっと簡単な表現で心を吐き出すんです が、自分のうまくいかない自分に自分がいちばん傷つけられるという、怒りを吐き出すだけでなく自分が消え入りそうになるという瞬間があるという感情の波を表現するように指導された気がします。それが役者としていい糧になりました。
監督: 本木さんは自分に近いキャラクターだったので、自分だったらどうするかということを試されていて、また、小説をもとにこの幸夫だったらどうするかということも振り幅をもって私に見せてくださいました。ただ私は小説の生き写しのような幸夫を求めていたわけではないので、ふたりでじゃあどうやったらこの映画にふさわしい幸夫の感情表現になるのか、と、本当にたくさんのテイクを重ねました。私が今まで撮ってきた映画の中で最も主演俳優のテイクを重ねた作品になりました。
STORY:
人気作家の津村啓こと衣笠幸夫(きぬがささちお)(本木雅弘)は、妻・夏子(深津絵里)が旅先で不慮の事故に遭い、親友とともに亡くなったと知らせを受ける。まさにその時、不倫相手と密会していた幸夫は、世間に対して悲劇の主人公を装うことしかできない。そんなある日、妻の親友の遺族――トラック運転手の夫・陽一(竹原ピストル)とその子供たちに出会った幸夫は、ふとした思いつきから幼い彼らの世話を買って出る。子供を持たない幸夫は、誰かのために生きる幸せを初めて知り、虚しかった毎日が輝きだすのだが・・・
出演:本木雅弘 竹原ピストル 藤田健心 白鳥玉季 堀内敬子 池松壮亮 黒木華 山田真歩 深津絵里
原作・脚本・監督:西川美和