長編初監督作でベネチア国際映画祭デビューを果たした俊英監督が、ポーランドでの映画制作から『愚行録』に至るまでを熱烈トーク!!
一番最初に手をあげたのは、妻夫木聡?!
「愚行録」公開記念・石川慶監督登壇イベント
映画『愚行録』(配給:ワーナーブラザーズ映画/オフィス北野)が2月18日(土)全国公開に先駆け、1月27日(金)石川慶監督登壇&ティーチ・インつき試写会イベントを行いました。本作は人間関係における秘められた羨望、嫉妬、駆け引き、日常的に積み重ねられた無意識の【愚行】(=愚かな行為)が複雑に絡み合い、見る者の人間性が極限まで試される戦慄の群像劇。上映後、石川 慶監督がご登壇されますと、詰めかけたファンからは暖かい拍手が送られました。
石川慶監督は「ティーチ・インは初めてなので、勝手がよくわかない部分もありますが、よろしくお願いいたします。」と、緊張気味で挨拶。「愚行録」という作品との出会い、ポーランドで学んだ映画術、ココでしか言えない撮影秘話など、映画を見終わった観客たちのどよんした雰囲気の中、ティーチ・イン付き試写会イベントが始まりました。
MC:大学では物理を勉強されたと伺っております。そもそも、監督を目指したきっかけはなんだったんでしょうか?
ずっと「映画を撮りたい」と思っていたのですが、中々映画を勉強できる環境に至らず…。物理をずっと好きで学んでいたのでまずは僕自身が一番興味がある方向に進みました。
MC:監督はポーランドで映画を学んだそうですが、なぜポーランドだったんですか?
映画学校に行くことを考えた時に、アメリカに行くのも考えたんですけど、自分の一番好きな監督やハリウッドで活躍している監督などはヨーロッパから来ている方が多くて、ヨーロッパで学ぼうと思いました。そこでなんとなく旧社会主義圏の映画学校に行こうと考えました。もともと旧社会主義圏の映画学校って国策として映画を撮っていきましょうという理念で学校を作られていて、学校というよりもスタジオに近い感じなんですね。それが面白くて、ここで試してみたい、あとはヨーロッパ中から映画をやりたいと考えている人たちが集まってるところでやってみたいなと考えました。
MC:『愚行録』を撮るに至っての経緯をお伺いできますか?
最初、プロデューサーとリサーチしている中、「愚行録」に出会いました。「愚行録」の原作に出会って読んだ時に感じたのは、ミステリーというより、一つ一つのディテールがすごく美しいと感じました。あとは、登場人物がどいつもこいつも愚かな面があって、いつの間にか自分も同じテーブルにいるように感じてもらえるんじゃないかと思いましたね。フィクションというよりも、今の日本の縮図というものを感じまして、これをやってみましょうという話になりました。
MC:今回主演の妻夫木さん、満島さんというキャラクターはどうやって作っていったのでしょうか?
妻夫木さんはまだ脚本もできてない状況で、一番最初に手を上げてくれたんです。ただ原作を読んでいただき、「田中が登場しないじゃないか?!」と言っていました。(会場に笑いが。)でも妻夫木さんが最初に手を上げてくれたからこの企画が進んだと思いますね。最初は、この田中というキャラクターを中心に物語を構成していきました。そこで、原作にはない、あの冒頭シーンもあえて入れて”愚行”を象徴するようにしました。
満島さんは、現場でも、現場以外でも、本当にとことん話し合いました。例えば、デーブルにつく登場人物同士の距離感について30分かな…いや、1時間ぐらいは話しましたね(笑)とにかく話し込んで話し込んで役を作り上げたので、満島さんは真正面から本気でぶつかってくれる人だと痛感しましたね。
そして、映画を見終えた観客の皆様よりも積極的な質問が!
観客1:登場人物の中で、印象に残っている人物は?
自分の学生時代を思い出しては、一番近かったかと考えるのは、尾形孝之(中村倫也)ですね。宮村淳子(臼田あさ美)が緒方に対して「もうちょっと上を目指して欲しいわ」というセリフがあるんですけど、実は、学生の時に付き合ってた人に同じことを言われたんですよね(会場が爆笑!)だから緒方には親近感が湧きます(笑)
観客2:過去の回想シーンでは、カメラが揺れているような動きを感じました。何か狙いはあったんですか?
今回の作品は非常にシンプルな会話劇なのです。現在から過去を回想し現在に戻るような…。そこで、過去と現在どう区別しようかを考え、三脚を使って撮影したり、手持ちカメラで撮影したり、違うレンズを使ったりとキャラクターへの距離感を過去と現在で違ったように見えるように工夫しましたね。
観客3:どのキャラクターもどうしようもない人達なのに、どうも嫌いになりきれないと思って、監督の人間への暖かさを感じました。何か意図があったのでしょうか?
それは僕の人間不信な面が逆に出ているんだと思います(会場に笑い)良い人の悪い面や、悪い人の良い面を見てしまうところがありまして。この”愚行”を際立たせるには登場人物悪い面だけではなく良い面も描かなければと思ったからですね。でも嫌な演技をして、嫌な演出をして、嫌な音楽を使って、嫌な編集をすることって、あまり難しいことではなくて、「愚行録」で何をしたかったかというと、嫌な人間かは置いといて、このモヤモヤした感じ、この怒りをどこにぶつければいいのかというのを最後観ている方に残したいと思って撮りました。
最後の挨拶
ベネチアでもジャパンプレミアでも上映しましたけど、可能なら、みなさん一人一人とお茶でも飲みながら感想を聞きたいです(会場に笑い)今日は本当にありがとうございました。
「愚行録」の撮影秘話や監督の想いを余すことなく話された石川慶監督。最後は暖かい拍手で見送られながら会場を後にし、ティーチ・イン試写会は幕を閉じました。
映画『愚行録』
【STORY】閑静な住宅街で起こった一家惨殺事件。被害者・田向浩樹(小出恵介)は大手デベロッパーに勤めるエリートサリーマン。妻の友季恵(松本若菜)は物腰が柔らかく、近所からも慕われる上品な美人。ふたりは娘とよく買い物に出かけるなど、誰もが羨む仲睦まじい≪理想の家族≫として知られていたが、田向は1階で友季恵と娘は2階寝室で刺殺された姿で発見され、世間を騒然とさせた。未解決のまま一年が過ぎ、風化していく事件。週刊誌記者の田中(妻夫木聡)は改めて真相を探ろうと関係者の証言を追い始める。しかし、そこから浮かび上がってきたのは田向夫妻の外見からは想像もできない噂の数々だった-。
妻夫木 聡 満島ひかり
小出恵介 臼田あさ美 市川由衣 松本若菜 中村倫也 眞島秀和 濱田マリ 平田 満
原作:『愚行録』貫井徳郎 脚本:向井康介 音楽:大間々 昴 監督:石川 慶
配給:ワーナー・ブラザース映画/オフィス北野 (C)2017「愚行録」製作委員会 公式サイトhttp://gukoroku.jp/