親子関係修復の依り代となるのは重量級のロボット映画「リアル・スティール」

SF

親子関係修復の依り代となるのは重量級のロボット映画「リアル・スティール」レビュー

(2011年 監:ショーン・レヴィ 出:ヒュー・ジャックマン、ダコタ・ゴヨ)

伝統+最新技術のハイブリッド

人間同士の格闘技はすっかり廃れ、ロボット・ボクシングが人気を博している近未来のアメリカ。元ボクサーのチャーリーも中古ロボのハンドラーとして、賭けボクシングのドサ回りで糊口をしのいでいた。ある日、彼のもとに元妻の訃報が届き、11歳の息子・マックスがやってくる。利己的な動機で息子を預かることにしたチャーリーだったが、スクラップ置き場に投棄されていた旧式ロボットをマックスが拾ってきたことがキッカケで、二人の関係は大きく変化していく……。

ボクシング映画にはアタリが多い。そして家族のドラマとも相性が良い。本作もその系譜に連なるが、リング上で拳を交え、親子関係修復の依り代となるのは重量級のロボットだ。

元はスパーリング用の旧型ロボである“ATOM”は、パソコンや携帯電話などと同じく、自我を持たない。『トランスフォーマー』シリーズやピクサーのアニメ映画でお馴染みの「自我を持った機械」描写と比較すると、「操縦者があってこそロボがある」という視点は少々冷やかな気さえするかもしれない。しかしこの設定、日本人にとっては『ゲッターロボ』や『ガンダム』等で慣れ親しんできたお馴染みの感触。そこに気配りの効いた細かい動作演出と最先端のCG技術が加わって、無機物であるはずのATOMを、あたかも感情あるキャラクターであるかのように応援することができる。ダテに十万馬力の大先輩と同じ名前を背負っちゃいないのだ。

そこへさらに上乗せされるのが、『チャンプ』や『オーバー・ザ・トップ』に代表される、「親子と書いてバディと読む」映画の伝統的なエッセンス。大型トレーラーを駆って各地を渡り歩くチャーリーとマックスの姿は、近未来SFの中にあってどこかクラシカルな匂いを振り撒く。ロボットの購入費用を捻出するために、養育権を金で売ろうとする等けっこうエグい行動もとるチャーリーなのだが、演じているのがウルヴァリンことヒュー・ジャックマンなので、ダメ親父っぷりもどこかチャーミング。後半、現役時代のスキルを駆使して強敵ロボの弱点を見抜き、逆襲に転じる瞬間は痛快だ。

過剰な電飾やドギツいカラーリングを施されたロボットがガツンガツンと派手なバトルを繰り広げるさまは、堅苦しい話など抜きにして素直に楽しめる。小さなお子さんと一緒に観るにもうってつけな一本だろう。

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