サスペンス

勇気を持って真相究明へ向かう政治ドラマ「JFK」レビュー

(1991年 監:オリヴァー・ストーン 出:ケヴィン・コスナー、シシー・スペイセク)

真実はそこにある

あらすじ

古くからの親友同士であるヘンリー、ジョーンジー、ビーヴァー、ピートの4人には不思議な共通点があった。幼い頃、ダディッツという少年をイジメから救って以来、それぞれが超自然的な能力に目覚めていたのだ。成人し、皆が別々の道を進んでいたある日、ジョーンジーの前にダディッツの幻が現れ、謎めいた警告を発する。「ミスター・グレイに気をつけろ」と……。6か月後、休暇で山小屋に集っていた4人組は、突如として数々の怪異に見舞われる。あらゆるものを侵食していく赤いカビ、奇怪な生物、町を包囲・隔離する軍隊……彼らは事態の全貌を掴めぬまま、自分たちの能力を武器に目の前の怪異と対決することになるのだが……。

レビュー

いまだアメリカの歴史上最大のミステリーの一つとして扱われ、数々の新説・陰謀論を生み出し続けている「JFK暗殺事件」。若き大統領が白昼、群衆の面前で凶弾に倒れるという異常事態が世界に与えた衝撃は大きく、特にケネディ被弾の瞬間を映しとらえたショッキングな8㎜フィルム映像(通称「ザプルーダー・フィルム」)は、一時代の終焉を象徴する忌まわしき記録として、米国史に深い爪跡を刻み付けた。そんな「自由の国の汚点」とも呼ぶべき事件の深層を抉り出すべく立ち上がったのは、『プラトーン』(86年)や『ウォール街』(87年)、『ナチュラル・ボーン・キラーズ』(94年)で政治・マスメディアの腐敗と欺瞞を告発し続けてきた社会派監督オリヴァー・ストーン。膨大な情報の提示と畳みかけるような語り口で、超大国の背後に存在する「悪」の姿を大胆に炙り出してゆく。

映画の公開から25年、事件から実に50年以上の歳月が流れたこともあり、劇中で最有力説として唱えられている物事の中には、後に挙げられた反証によって説得力を失ったものも見てとれる。インターネットで暗殺事件に関する情報を検索してみても、雨後のタケノコの如く乱立した仮説どうしがゴチャゴチャに絡み合い、却って受け手の視界を遮ってしまっている感が否めないが、それは致し方ないことだろう。映画の場合、新説が出てきたからといって内容を手軽に改変することはできないし、問題の根本は「開示されて然るべき証拠物件が未公開のまま」という現況にあるのだから。映画『JFK』はルポルタージュではない。そこで描かれるのは、ひとたび「藪の中」に埋もれてしまったものを再発見することの難しさ、そして真相の究明が、どれほどの勇気と犠牲を伴う行為であるか、ということである。

強大な権力を持った組織にとって、一個人の口を封じ、証拠をもみ消すことなど朝飯前。悪びれる様子もなくクロをシロと言い通し、それでも黙らぬ相手は力ずくで黙らせる。大勢の目撃者が報復を恐れて口を噤み、当然存在するはずの検証物は一向に見つからない。大々的なネガティヴ・キャンペーンや腹心の部下による謀反も重なって、ギャリソン陣営は窮地に追い込まれる。やがて脅迫の手は家族にまで及び、平穏な日常を取り戻したいと願う妻との衝突で家庭生活も崩壊の危機に……陰謀を立証できる望みは薄く、全てを失う可能性は限りなく大きい。

それでもギャリソンは諦めようとしない。調査費用が尽きかければ私財を割いて補填し、道化者と嘲られるのも構わずトークショーに出演して自説を展開、幾多の妨害に屈することなく、圧倒的に不利な状況を何とかしてひっくり返そうと奮闘する。民主主義の理念が影の力によって脅かされ、不正や明白なウソがまかり通るようになってしまったら、それは彼が誇りとしてきた「祖国」の死を意味するからだ。物語の最終局面、ギャリソンが裁判所で「今こそ、人民の人民による人民のための政治が存在することを示すときだ」と訴えかけるシーンは、数ある法廷闘争映画の中でも屈指の名場面である。そして彼はここで「たとえ自分の力が及ばなかったとしても、続く代が必ずや真実を目にするだろう」と語りながら、傍聴席に座る8歳の息子ジャスパーを指す。ジャスパーを演じているのは、ストーン監督の実子ショーン君。俳優ケヴィン・コスナーの体を借りたギャリソン地方検事の言葉は、監督の切なる願いをも代弁した観客へのメッセージなのだ。

劇場公開版で約3時間、ディレクターズ・カット版なら200分を超える大長編ではあるものの、物語が緊張感を失わないままハイ・テンポで進行していくので、ダレることなく楽しめる(これはストーン監督の演出センスも然ることながら、編集を担当した黄金コンビ、ジョー・ハッシング&ピエトロ・スカリアの貢献も大だ)。筆者が初めて本作を観たのは小学校5、6年生の時分だったと思うが、理路整然としたストーリーテリングのおかげで本筋を見失わずに没入することができた。映画がきっかけで現代史に興味を持ち、学校図書館の禁帯出書籍だった『20世紀全記録』(講談社)を家にコッソリ持ち帰って読んでいたことも懐かしい思い出だ(図書委員権限の悪用です。えらいスンマセン……)。毀誉褒貶の激しいストーン監督作品ではあるが、「説教臭い」、「重たい」と敬遠せずに観てほしい、まさに第一級の政治ドラマである。

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