映画レビュー

『猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)』創世、衝突、そして約束の地へ

映画『猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)』をレビュー

高い知能を持つエイプ(類人猿)の誕生と、猿インフルエンザの大流行から15年。人類の大半が死滅した世界で、シーザーをリーダーとするエイプの群れは息を潜めて暮らしていた。だがある日、森の奥深くにあるエイプの砦を、冷酷な“大佐”に率いられた人間の軍隊が急襲。妻子を殺されたシーザーは深い悲しみと憎悪の念に駆られ、群れを離れて復讐の旅に出る。旅の途中、人間の男と遭遇したシーザーは咄嗟の判断で相手を撃ち倒してしまうが、男の隠れ家で発見したのは、言葉を発することができない少女。かつて世界中に蔓延したウィルスは、エイプの進化を促すと共に、人間に退化をもたらしていたのだ……。

猿の惑星:創世記(ジェネシス)』(11年)、『猿の惑星:新世紀(ライジング)』(14年)に続く、リブート版『猿惑』シリーズ第3弾。『新世紀』のクライマックスで示唆されていたエイプ軍と人間軍の対決が、壮大なスケールで遂に描かれる。
[2017年 監:マット・リーヴス 出:アンディ・サーキス、ウディ・ハレルソン]

リブート版で推し進められてきた方針の究極形というべきか、本作の主役は完全にエイプ。そうなると必然的に、簡潔な台詞とボディ・ランゲージ(プラス音楽)のみでフォローしなければならないパートが増えてくるわけだが、これが実に鮮やかにキマっている。寡黙にして雄弁、抑制の先にある豊かさ。昨今の悪しき流行に乗った、バカ丁寧なダイアローグで何でもかんでも説明したがるタイプの映画とは一線を画するフレッシュな仕上がりだ。

もちろん、そんな作品を成立させている大きなエレメントの一つは、WETAデジタル社を中心とした視覚効果工房による圧倒的なVFXである。役者の動きを写し取ってCGキャラクターに反映させるパフォーマンス・キャプチャーの効果は絶大で、生物感満点。水に濡れ、炎に焦がされるエイプたちの質感表現は、『創世記』のそれと比較しても格段の進歩を遂げており、映画を観ているうちに「中の人」の存在をキレイさっぱり忘れてしまうほど真に迫ったものだ(そう、場面によっては大佐役ウディ・ハレルソンの見事な禿頭のほうが、いかにもCG然として見えてしまうくらい)。

そして何といっても最大の見どころは、エイプたちの未来を双肩に担う総大将、シーザーが披露する絶品演技。人間に育てられ、無駄な争いを好まず、異種間の和平実現を願ってやまなかったはずの彼が、本作では家族を殺された怒りに燃え、己が進むべき道を幾度も見失いそうになる。威風堂々とした佇まいの中に、高い知能を獲得したが故の苦悩や葛藤を滲ませたシーザーは、まるで歴史スペクタクル映画に出てくる悲劇の主人公のようでもある。パフォーマンス・キャプチャーを用いた演技の第一人者であるアンディ・サーキスの感情表現は、身も蓋もない言い方をすれば「ドットの集合体」でしかないはずの存在に崇高な魂を吹き込み、映画史上屈指の漢(おとこ)キャラにまで昇華させた(劇中、シーザーの表情が超クローズアップで何度も映し出されるが、これなどは生身の俳優でも成功させるのが相当難しいカットだ)。観客が感情移入するための器としても、これほど豊潤で奥行きのあるキャラクターがCGで生み出されたことに対して驚嘆せずにはいられない。

前作の時点でもはや一枚岩ではなくなってしまったエイプサイド、その内部抗争や微妙な立ち位置のバリエーションも今まで以上に複雑化し、「人間VSエイプ」という単純な図式から解放された劇的な瞬間が連発される。その一方で、シーザー、博識ウータンのモーリス、忠臣ロケットら古参組が織り成す「不変の友情模様」は、シリーズを見守ってきたファンの心を和ませ、熱くさせてくれること請け合いだ。製薬実験の副産物として誕生し、幾多の苦難を乗り越えて「約束の地」を目指すエイプたち……彼らが遂に新天地を発見したとき、観客は『猿の惑星』(68年)の伝説的なラストで味わった絶望とは真逆の感情に包まれることだろう。たとえそれが、人間にとっては限りなく無情な世界であったとしても。

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