ホラー

『ハロウィン』レビュー!

※本作はR15+指定作品です
2018年
監督:デヴィッド・ゴードン・グリーン
出演:ジェイミー・リー・カーティス、ジュディ・グリア、アンディ・マティチャック、ウィル・パットン、ジェームズ・ジュード・コートニー
公式サイト:https://halloween-movie.jp

還暦殺人鬼 VS 不沈のスクリーミング・クイーン

アメリカの小さな田舎町・ハドンフィールドで起きた“ハロウィンの惨劇”から40年後。殺人鬼マイケル・マイヤーズの襲撃から生還したローリー・ストロードは、娘であるカレンや孫のアリソンと離れ、孤独な日々を過ごしていた。しかし新たなハロウィンの前夜、精神病棟から刑務所へと向かっていた護送車からマイケルが脱走。「いつの日か、アイツと再び戦うことになる」……そう予期していたローリーは、家族の命を守るべく、武器を手にして宿敵を待ち受けるが……。

1978年、のちの“マスター・オブ・ホラー”ジョン・カーペンター監督がデブラ・ヒルと共に8日間で書き上げた1本のシナリオ。予算32万ドル、撮影日数20日という余裕無き環境下で映像化されたこの物語『ハロウィン』は、米国興行収入4700万ドルという驚異の大ヒットを叩き出し、その後に星の数ほど作られることになるスラッシャー映画にも多大な影響を与えた。世界的ホラーアイコンとなったブギーマン=マイケル・マイヤーズも、この40年の間に幾度となく復活を繰り返しては景気よく死体の山を築いてきたわけだが、正直なところ続編の中には、栄えある“ハロウィン・ブランド”に唾するような代物もチラホラ。過去作で積み重ねてきた劇中設定は、今や大層複雑で邪魔臭い忌み枝と化している。そもそも、シリーズの生みの親であるカーペンター自身、続編やロブ・ゾンビ監督によるリメイク版でのマイケルの描き方についてはかなり否定的だ。馴染みのキャラクターを残し、『ハロウィン』としての体面を保ちつつ、新規のお客を取り込むにはどんな戦法が最善か?この難題に対し、シリーズ40周年記念作品ともいえる本作の製作陣が導き出した答えは「『Ⅱ』以降のアレコレは全て“無かったこと”にする」……あまりに強引かつ大雑把なドリブル。これで肝心の映画が箸にも棒にもかからない愚作であったなら、ファンが包丁片手に「責任者出てこいや!」のシュプレヒコールをおっ始めたはずだが、2018年のハロウィン・シーズンに公開された新生『ハロウィン』はコケるどころか、全米ボックスオフィス2週連続1位のメガヒットを達成。作り手側の新戦略が、決して見当外れのものでは無かったことを証明してみせた。

前述の事情により、確認殺害戦果をゴッソリと削られてしまったマイケル。長い精神病棟暮らしで髪はすっかり白くなり、気付けば干支も一巡した。人間、60歳ともなればそろそろ体力の
衰えを痛感せずにはいられないと思うが、そこは超自然の世界に片足突っ込んでいるマイケル、常人の道理など全く通じない。護送途中に脱走し、手頃な作業着と懐かしの白マスクをゲットしてからは、40年のブランクを微塵も感じさせない手捌きでセッセ、セッセと人を殺し続ける。アワ食った標的が駆け出しても慌てず騒がず、大股歩きでいつの間にやら追いついてはグサリ。反撃により深手を負っても「ウッ」と小さく呻く程度で、すぐさま戦線復帰するというワーカホリックぶりが清々しい。血縁やら邪教の呪いやら、シリーズの七面倒な後付け設定から解放された本作のブギーマンは、カーペンター版で初めて銀幕に登場した時と同様、ひたすら不可解で力強く、魅力的なキャラクターとして成立している。

1作目からの劇中経過時間で全くブレの無いところを見せたマイケルと比べると、ローリー・ストロードの境遇はかなり悲惨だ。事件のトラウマと長い年月は、快活で心優しい女子高生を偏屈独居老婆へと変えてしまった。自宅をブービートラップだらけの鉄壁要塞に改造し、娘のカレンにまで対マイケル用の戦闘スキルを(傍から見れば児童虐待ともとれるような徹底ぶりで)叩き込んだ結果、いつしか家族とは疎遠になり、ハドンフィールド界隈でもすっかり「頭がアレなバアさん」という地位を確立。終末世界の到来に備えてシェルターを造り、生活用品を蓄える“ドゥームズデイ・プレッパー”と呼ばれる人々が現実にも存在するが、ローリーにとってはマイケルこそが最上位の災厄であり、人並みの幸せ全部放り捨ててでも倒さなければならない“悪”なのだ。このローリーの自己犠牲が後々功を奏すると分かってはいても、彼女が邪険に扱われまくる前半パートは観ていてかなりイタいものがある。

しかし“不沈のスクリーミング・クイーン”ローリー・ストロードの根性は、周囲の無理解やショボい陰口で萎れてしまうほどヤワではない。マイケルがいよいよ現実の脅威となって迫りつつあることを察知したローリーは、尻に帆をかけて逃げるどころか猛然と反撃開始。老眼を爛々と輝かせ、銃を片手にブギーマンを追い掛け回すその姿は、まるで過去作におけるマイケルの天敵、ドクター・ルーミスの魂が憑依したかのような猛々しさで、最高にバッドアス。ここに、息子コディとダニエル・デイヴィスの参入でヤンチャ度がアップしたカーペンター音楽が被されば、もう極楽気分間違いなしだ。オリジナル版へのオマージュは、ファンメイドの続編で起こりがちな「過剰サービスの押し付け」を巧みに回避しているし、今どき珍しいほど簡潔、それでいてバッチリ不穏な余韻を残すラストも趣深い。

監督を務めたのは、『スモーキング・ハイ』(08年)や『ボストン ストロング~ダメな僕だから英雄になれた~』(17年)のデヴィッド・ゴードン・グリーン。かつて『ハロウィンⅡ』(81年)の編集過程で、リック・ローゼンタール監督と激しく衝突した経験を持つーペンター、長らくコメディ畑で活躍してきたグリーン監督の登用にも、期待と不安が綯い交ぜになった複雑な感情を抱いていたのではなかろうか(勿論、意表を突く人選で成功を収めた映画も沢山あるわけだが)。だが結果として、グリーン監督はカーペンターを唸らせるほどの見事な演出手腕を発揮、シリーズ展開の新たな可能性を示してみせた。そういえば、本作関連のインタビュー映像に登場するカーペンターは、いつになく饒舌でご機嫌だ。2018年版『ハロウィン』の成功を誰よりも喜んでいるのは、“マスター・オブ・ホラー”其の人なのかもしれない。

映画『ハロウィン』オフィシャルサイト:https://halloween-movie.jp


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