サスペンス

3月23日公開『コンジアム』韓国ホラー映画歴代興収2位を記録した話題作、先行レビュー!

[2018年 監:チョン・ボムシク 出:ウィ・ハジュン、パク・ジヒョン、パク・ソンフン]

韓国若手キャスト、恐怖の顔面祭り

入院患者の不可解な死や、院長の行方不明事件が原因で閉鎖された、昆池岩〈コンジアム〉精神病院。YouTubeで恐怖動画を配信する人気チャンネル「ホラータイムズ」の主催者・ハジュンは、一般参加者を含む男女7人のチームを編成し、コンジアム精神病院内探索のライブ中継を開始する。100万ページビューを目標に掲げるハジュンが予め用意しておいた仕込み演出の効果もあり、サイトへのアクセス数は順調に伸びていく。ところが、探索を続ける隊員の周囲で予期せぬ怪現象が起こり始め、状況は一変。身の危険を感じて廃墟を逃げまどうチームメンバーたちは、世にもおぞましい“402号室の呪い”の真実に触れることになる……。
2018年の春に韓国で封切られ、「ホラーは当たらない」という韓国映画界のジンクスを打ち破る大ヒットを記録した話題作。京畿道広州市に実在する精神病院の廃墟を舞台に、呪われた場所へ足を踏み入れた若者たちの恐怖体験を一人称視点(P.O.V.)形式の撮影で追った、新感覚ホラー映画である。

「主観映像だけで構成された映画を撮る」……そんな誘惑に駆られ、実践に移す映像作家は多い。登場人物の視界を観客にも共有させ、絵空事に妙な生々しさを付与するこの撮影スタイルは、近年の映画界、とりわけSF・ホラー畑における人気手法の一つとなり、ブームの中で『クローバーフィールド/HAKAISHA』(08年)や『REC/レック』(07年)、『ハードコア』(15年)といった話題作がいくつも生み出された。無論、「主観撮影=リアル」などと安易に等号で結び付けられるものではなく、スタイルに束縛されて不自然な部分ばかりが悪目立ちしてしまった映画もゴマンとあるのだが、「人気YouTuberとそのチームによる動画配信」という理由づけがあれば、この手法を有効活用できる可能性はグッと高くなる。ネットの動画投稿が素人芸扱いされていたのは昔の話、今や配信者がテレビ番組顔負けの機材を揃え、複数台のハイスペック・カメラを使用することだって珍しくないわけで、バリエーション豊かな視点も無理なく確保することが可能。なんたって、肝試し+P.O.V.という取り合わせからしてアタリの匂いがプンプンだ。「韓国ホラー歴代興収2位!」の惹句にも期待を煽られつつ、勢い込んで試写に臨んだ、その結果や如何に?

幽霊を使って観客を怖がらせるのは、実のところかなり難しい。どんなふうに登場させるか?画面のどこに配置するか?そのサイズは?動き方は?……立ち位置(浮遊位置?)を半歩間違えただけで、恐怖の対象となるはずのオバケが一転、滑稽な道化者となり果てる。ホラー映画においては、たとえどんな有名俳優が出演していようと、異形の存在に画面の支配権を譲らなければならない瞬間があるほどだ(全ては最怖の映像を撮るため)。大スターはどう映しても大スターだが、ゴーストは然にあらず。そう、「ヤツら」は時として非常に場所を食う。『降霊』(99年)の赤服幽霊、『イット・フォローズ』(14年)で、ピントも合わぬ画面奥から近づいてきた怨霊などは、ゆとり十分なキャンバスと的確な画面設計があったからこそ、あれほど不気味で禍々しい存在として成立していたわけである。

そこへいくと、此度の『コンジアム』は少々分が悪い。いかにも動画配信で多用されそうな小型カメラの映像は臨場感を出すうえで一役買っているが、怪異に遭遇した人間サイドのリアクションを丹念に描けば描くほど、幽霊を「正しく」配置するためのスペースがどんどん削られていってしまうのだ。一瞬の異変をリプレイ映像付きで見られる心霊動画と、シーンの積み重ねで恐怖を醸成していく長編ホラー映画では、空間の扱い方が全く異なる。悪しきモノに憑

依された登場人物の顔の大写しなど、これがパソコンのマイクラ映像であれば腰を抜かすほどビビるところなのだろうが、映画でやられるとどうにも間抜けだ。幽霊そのものの造型もさほど凝ったものではなく、ゴーストの存在感だけで物語を牽引するにはいささかパワー不足。演者に撮影を行わせることで映画に迫真性を持たせようとしたチャレンジ精神は評価に値するものの、作り手が狙った通りの成果を上げているとは言い難い(そして前半部分、人物紹介も兼ねた「ホラータイムズ」チームの和気藹々シークエンスを、窮屈なアングルで延々と見せられるのは結構ストレスがたまる)。

映画館で失禁モノの恐怖を味わいたい、というコアなホラーファンの御眼鏡にかなう作品ではないかもしれないが、幽霊サイドの活力不足を補うかのように大量投入されているのが、小型アクションカメラで近接撮影されたキャスト陣の「顔」。鼻孔・口蓋マル見せでガクブルする美男美女の表情だけは、それこそゲップが出るほどに拝むことができる。怪異な現象が本格発動してからのスクリーン上は、韓国若手俳優による顔面祭り状態。「酷い目に遭った人のテンパり顔でゴハン何杯でもイケる」という向きには、自信を持ってオススメだ。

映画『コンジアム』は3月23日(土)より、
シネマート新宿ほかにて全国順次ロードショー!

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