アクション

映画『デス・ウィッシュ』レビュー!

[2018年 監:イーライ・ロス 出:ブルース・ウィリス、ヴィンセント・ドノフリオ]

※本作はR15+指定作品です

必殺外科医、見参

ポール・カージーは、シカゴの病院に勤務する外科医。ある日の夜、自宅に押し入った3人組の強盗がポールの妻を殺害、娘は重傷を負わされ昏睡状態に陥ってしまう。遅々として進まない警察の捜査に悲しみと怒りを募らせるポールだったが、一丁の拳銃を偶然手に入れたことで彼の中の何かが変わる。密かに射撃の腕を磨き、夜の街を徘徊していたポールは、偶然出くわした自動車強盗の犯人を射殺。その模様を撮影した動画がSNSで拡散され、悪を討つ「謎の死神」の存在はシカゴ中に知れ渡ることになるのだが……。

ブライアン・ガーフィールドの小説を基に、マイケル・ウィナー監督、チャールズ・ブロンソン主演で映像化されたヴァイオレンス・アクション『狼よさらば』(74年)。その後作られた4本の続編と共に、ブロンソンの代表作となったこの自警(ヴィジランテ)映画が、『ホステル』(05年)、『グリーン・インフェルノ』(13年)のイーライ・ロス監督×ブルース・ウィリス主演で21世紀に蘇った。

『ダイ・ハード』(88年)で気怠そうな表情を浮かべながらテロリストを皆殺しにしていたウィリスも今や還暦越え。一時は未練がましく植えたり被ったりしていた頭髪をズルリ脱ぎ捨てて禿頭道に入り、苦虫を噛み潰したような面構えは加齢で更に磨きがかけられた。ブロンソン版から変更された主人公の職業(外科医)にも、『永遠に美しく…』(92年)で美容整形外科医、『薔薇の素顔』(94年)や『シックス・センス』(99年)で精神分析医を演じた経験を活かし(?)、意外にサラリと染まってみせる。もちろん、処刑人デビューを果たした物語中盤からは「いつもの」ウイさんへと段階的に変貌。銃や工具ばかりでなく、人体の耐久性を熟知した医者ならではの一寸刻み拷問スキルまで披露してくれる(加えて「棚からボタモチ」という形容がピッタリな強運攻撃も)。

とはいえ、現在はアメコミ・ヒーローの鉄拳制裁にも節度と大義名分が求められる時代。法の埒外で悪を裁く自警団員にとっては、大層やりにくい世の中である。笑顔で指鉄砲を構えるブロンソン版ポール・カージーをリメイク作にそのまま移植すれば、「何ニヤついてんだテメェ!」という非難の声があがること必至だろう。デビュー以来、フィルモグラフィを血で塗り重ねながら、MPAA(アメリカ映画協会)や世の無理解と戦い続けてきたイーライ・ロス監督は、この大きな壁に天性のストーリーテリング能力とバランス感覚を駆使して立ち向かう。「死神」の私的制裁に賛否両論巻き起こるシカゴの空気や、ダークサイドの力に酔いしれ、それに飲み込まれそうになるポールの姿をきちんと描きつつも、『狼よさらば』では街のゴロツキ全員に向けられていたポールの怒りの矛先を可能な限り絞り込み、そして厳選した標的を「情状酌量の余地などカケラもないワル」として弾道に立たせ、膳立て万端でイビリ殺す。『デス・ウィッシュ』の悪党たちは、近年のアクション映画に登場するヴィランと比較してみても断トツにチープでゲスく、オーラも奥行きもないペラッペラの人間として描かれているが、これはロス監督の意図的な設定だろう。「強盗やヤクの売人にも彼らなりの事情が……」なんて逃げ口上は、少なくともこの映画の中では何のバリアにもなりゃしない。同じB・ガーフィールド原作映画でありながら、ギャング・サイドにもある程度の人格が与えられていた『狼の死刑宣告』(07年)では、パイロット・スピードの楽曲“Alright”がしっとりエモーショナルに用いられたが、今回流れるのはまさかのAC/DC(笑)。「お前らの葬送にはコレがお似合いさ!」と言わんばかりのチョイスに、ロス監督の皮肉が込められているようで痛快ですらある。

ブロンソンが最後にポール・カージーを演じた『狼よさらば 地獄のリベンジャー』から24年。大勢の監督・主演候補者たちにリレーされ続けた復讐鬼の魂は、もとの体に負けず劣らずダイ・ハードなガワを得て転生に成功した。アメリカでの興行成績はやや期待外れなものとなってしまったようだが、ヴィジランテ・ムービーとしての完成度は高く、“DEATH WISH”の金看板を掲げる資格十分。最近、どうにもショッパい映画への出演が増えていたブルース・ウィリスにとっても、久々に確かな手応えのある現場だったに違いない。シリーズ化、切に願います

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