SF

映画『ザ・プレデター』レビュー!

[2018年 監:シェーン・ブラック 出:ボイド・ホルブルック、オリヴィア・マン]

※本作はR15+指定作品です

麗しきMotherf××ker

「プレデター」……アーノルド・シュワルツェネッガー主演のSFアクション映画『プレデター』(87年)で初登場したキャラクターであり、『エイリアン』シリーズの異星人=ゼノモーフに匹敵する人気を誇る地球外生命体界のビッグネームだ。まず何よりも、時代を超越した造型が素晴らしい。架空の生物を創造する場合、コンセプトアートの段階で超カッコ良く見えたものが、立体化された途端に魅力半減……なんて事態はしょっちゅう発生するわけだが(デザイン画で活き活きと描かれていた触手や体毛が重力に負けてシンナリ、予算と技量が構想に追いつかなかった結果のムゴい皮膚ペイント等々、落とし穴は山ほどある)、特殊メイクアップの巨匠スタン・ウィンストン率いるチームがクリエイトしたこの宇宙狩人は、フォルムも存在感も圧倒的。古代の戦士チックな雰囲気+ハイテク装備という取り合わせは多くのクリエイターのイマジネーションを刺激し、映画やコミック、ゲームなどのメディアで、多種多様な「プレデター・ワールド」が構築されていった。

だが、新天地を求めて航海に出たプレデター全てが理想的な狩場へと到達できたわけではない。映画の世界に目を向けてみれば、養殖ゼノモーフ相手に寒中プロレスをやらされた『エイリアンVS.プレデター』(04年)、せっかくのベテラン戦士の奮闘が、魅力ゼロな人間たちと酷い脚本(そしてやたら暗い映像)のせいで台無しになった『AVP2 エイリアンズVS.プレデター』(07年)、あろうことか戦場のピアニストに返り討ちにされてしまった『プレデターズ』(10年)と、勇名轟かせるはずがとんだ迷子ツアーとなり果てた事例もゴロゴロ。プレデターが持つ特異なキャラ性と、映像作品としての面白さを両立させるのは意外と難易度が高いようである。

今回、監督を務めるシェーン・ブラックは、かつて『プレデター』でシュワ隊長率いる特殊コマンド部隊の一員に扮し、ジャングルに下ネタを撒き散らした挙句プレデターにブッ殺された、ある意味レジェンダリーな経歴の持ち主。異星のハンターに勝るとも劣らぬ個性的な人間揃いだった1作目に倣ってか、本作でもマンガ級に風変わりな登場人物たちを用意、過去作でたびたび指摘されてきた「プレデター最高。人間サイド空気」という問題の解決を図る。対するプレデターも、「観客を本気で怖がらせたい」という監督の意向で残虐性が大幅アップ。お馴染みの極悪ウェポンを用いた攻撃はもちろん、実写版では初となる噛みつき・喰いちぎり殺法まで披露してくれる。

百戦錬磨のはみ出し者チームと獰猛なスペース・ハンター。そこへもうひとり、ある目的のため宇宙から飛来した最凶生物が乱入しての三つ巴、さぁどれだけ凄惨な戦いが繰り広げられるのか……と思いきや、『リーサル・ウェポン』(87年)、『ロング・キス・グッドナイト』(96年)の脚本家としても知られるブラック監督は、ここで自分の最大特性を発揮する。同音異義の言葉遊び、そして場の雰囲気を読まないジョーク・下ネタの大量投入だ。80年代後半~90年代半ばあたりのアクション映画なら「おっ!気が利いてるねぇ」程度に感じたかもしれず、軽妙洒脱なバディ・ムービー(ブラック監督の過去作『キスキス,バンバン』(05年)や『ナイスガイズ!』(16年)などもこの範疇に含まれる)では、今でも当たり前のように用いられているカードなのだが、人体が切り裂かれハラワタが飛び出す本作の土俵上では、何とも言い表せない居心地の悪さを生んでいる。『AVP』シリーズや『プレデターズ』の頃から何となく漂い始めていたマンネリ感を一掃するべく、製作陣が捲土重来を期して打った「捨て身の一手」とも取れる試みだし、当然、賛否両論を巻き起こすことだって想定の範囲内だろう。この新機軸をうまく受け入れて作品を堪能できるか、あるいは違和感を払拭できないまま、オーラスの「玉手箱開封」を目の当たりにするか?こんな究極の選択を観客に突き付けてみせるブラック監督、どうやら相当なバクチ好きのようだ(度し難いKYさんである可能性も捨てきれないが)。

そして本作にはもう一点、人類とプレデターの歴史におけるターニング・ポイントが存在する。過去作でバイオマスクを外す度に、人間から“Ugly motherfucker(醜いクソ野郎)”と心無い言葉を浴びせられ続けてきた御尊顔が、今回遂に「美しい」と評されるのだ。しかも女子に!“You’re one beautiful motherfucker…(なんて美しいクソッタレなの……)”。そんな優しい台詞を耳元でウィスパーされて、プレデターの寝顔も(そう、この記念すべき瞬間に彼は爆睡中なのだ)、何時になく安らいで見える。宇宙のあちこちでブサイクと罵られ、壮絶に散っていったご先祖様の魂も、この褒め言葉でいくらかは救われたに違いない。女子、グッジョブである。

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