SF

映画『パシフィック・リム:アップライジング』レビュー!

[2018年 監:スティーヴン・S・デナイト 出:ジョン・ボイエガ、ケイリー・スピーニー]

巨神、再起動

異世界種族「プリカーサー」が地球に送り込んだ巨大生命体=カイジュウと、人類が造り出した人型決戦兵器=イェーガーとの激戦終結から10年。環太平洋防衛軍は再侵略に備え、新たなイェーガーの開発とパイロット育成に着手していた。同じ頃、中国の巨大企業・シャオ産業が推し進めていたニュータイプの量産型無人イェーガーによる地球防衛計画が大詰めを迎えるが、各拠点に配備された無人イェーガーが突如として暴走、それにより世界各地で時空の裂け目〈ポータル〉が開き、3体のカイジュウが地球へと侵入する。10年前の戦いで戦死したスタッカー・ペントコスト司令官の遺児ジェイクは、仲間たちと共に新世代イェーガーに乗り込み、決戦の地・日本へ向かうのだが……。

2013年、夏。幼少期に日本の特撮の洗礼を受けたギレルモ・デル・トロ監督が、ありったけの怪獣&ロボット愛を詰め込んで世に放った超大作『パシフィック・リム』。ラミン・ジャヴァディのキャッチーかつ燃えるスコアに乗せて展開する単純豪快なストーリー、そして重量感満点の巨大ロボとカイジュウが街なかでドッシャンガッシャンと派手にドツき合う光景は、根っからのSFオタクのみならず、視覚効果の見本市的な作品群に飽き飽きしていた観客たちのガキンチョ魂にまで火を点けた。3D・4DX・極上爆音などの+α上映でも、これまた熱狂的な支持を獲得。かつてウルトラマンやマジンガーZに憧れ、超合金ロボを買ってもらうために渋々オトンの肩揉みなんぞした経験を持つ者ならば歓喜の涙を禁じ得ない、まさに「グレートな夏祭り」だった。

楽しいお祭りなら再開催を求める声が上がるのは当然のこと、早い段階から続編製作の話も出ていたわけだが、オトナの事情でなかなか撮影に漕ぎ着けることができず、ついにはデル・トロが監督を降板(本作ではプロデューサーとしてクレジット)。頼れる司令官の退任にファンが落胆する中、それでも企画が立ち消えになることはなく、『スパルタカス』や『デアデビル』等のTVシリーズを手掛けてきたスティーヴン・S・デナイトを新監督として、遂に巨神の再起動と相成った。

細部の描き込みに異常なほどの拘りを発揮し、どんな題材でも自分色に染めあげてしまうオタク職人デル・トロのコッテリとしたディレクションに対し、デナイト監督のそれは堅実かつ軽快。危なげなくサクサクと物語を進めていくスキルは、TVシリーズの脚本・演出を数多くこなす中で培った熟練の技といえよう。新世代イェーガーはフォルムも動きもグッとシャープに進化し、若手を中心としたキャスト陣は、ともすれば機械油臭で満たされてしまいそうな映画にある種の瑞々しさをもたらす(近年、数々の話題作で目覚ましい活躍を見せているジョン・ボイエガは本作でも絶好調)。『ハンガー・ゲーム』(12年)や『ダイバージェント』(14年)にも通ずるヤングアダルト的趣致が強まった一方で、前作にあった闇雲ガテン系テイスト、俗に言う「永井豪イズム」が目減りしてしまった感は否めないものの、大ボラを大ボラとして恥ずかしげもなく押し通す『パシ・リム』精神はちゃんと受け継がれているので無問題。特にクライマックス、未来都市「なんちゃってTOKYO」でロボット戦隊と最凶合体カイジュウが繰り広げる大バトルと、そこから戦場を霊峰FUJIに移しての最終決戦は、バカ画を圧倒的解像度で表現してみせる大祭りの極致だ。この全然気取らぬハッチャケ具合、怪獣映画好きとして応援せずにはいられない。

フタを開けてみれば、公開前に何となく下方修正されつつあった合格ラインを余裕で超えてきた『アップライジング』。とはいえ、あまりにスムーズで優等生的な語り口に、若干の食い足りなさを感じたのも確かである。もしも更なる続編があるとしたら、そこはやはり本家本元、デル・トロ再登板の可能性も残してほしいところだ。人間に擬態する巨大虫を引っ提げてメジャー進出、異形の地獄小僧を愛情タップリに実写化し、ついにはオスカー監督となってしまったオタク界の巨星……『クリムゾン・ピーク』(15年)、『シェイプ・オブ・ウォーター』(17年)と、最近はアート色強めな捻転ラブストーリーにご執心の御大だが、ここいらで一発、デル・トロ謹製のひたすら痛快なポップコーン・ムービーを観てみたいものである。

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