SF

映画『アントマン&ワスプ』レビュー!

[2018年 監:ペイトン・リード 出:ポール・ラッド、エヴァンジェリン・リリー]

シマらないのが魅力的

スーパーヒーロー・チーム「アベンジャーズ」が内乱によって分裂してから2年。ソコヴィア協定に違反したかどで逮捕されたアントマン=スコット・ラングは、FBIによる監視のもとで自宅軟禁生活を送っていた。謹慎の解除が目前に迫ったある日、長らく音信不通だったハンク・ピム博士とその娘ホープに再会したスコットは、30年前に量子世界で行方不明になったハンクの妻・ジャネットが生存しているかもしれないこと、そして彼女を救出する方法が見つかったことを聞かされる。救出ミッションには、ハンクとホープが建造した「ある装置」が必要不可欠。しかし、闇の武器ディーラーや神出鬼没の敵・ゴーストもまた、それぞれの思惑を胸に装置を狙っていた……。

サイズ・チェンジはボタンひとつで自由自在。鍛え抜かれた肉体と、スーパーヒーロー界屈指のパッとしない素顔のギャップも魅力的なバツイチ中年戦士、アントマンが帰ってきた!!全世界の映画館をお通夜ムードに染め上げた『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(18年)の公開から半年も経たぬ今、宇宙規模のドタバタに参加し損ねた蟻さんヒーローが、超有能なパートナーを得て新たなミッションに挑む。

『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(16年)では、双方のチームが緊迫した空気に包まれる中、合流時にひとり爆睡していたスコット。今回も自宅謹慎中に薬ブッ込まれたうえでアッサリ拉致……と、相変わらずの迂闊な感じが愛らしい。主人公がそんなだからか、映画全体の雰囲気も「良い意味で」フンワリ弛緩している。物体のサイズがあり得ないほどに変化するVFXはスリリングというよりはコミカルだし、「アタシの体、治してよ!」「いや、うちの嫁を先に!」ってな具合に進むバトルはあまりに動機がパーソナル。過去作のおさらい、キャラクター紹介、銀河のあちこちで展開するドラマの集束……それらを150分前後のタイムリミット付きでキリキリ回していかねばならない『アベンジャーズ』シリーズとは、語るべき内容も肉密度も違うのだ。ゆとりがあるおかげで、スコットの悪友3人衆が織り成す「ムダで面白いトークイベント」の時間も前作に引き続きしっかりと確保。「自白剤」というネタひとつを延々引っ張り続けるシークエンスで匠の技を披露してくれる(そして3バカのひとり、カートがドヤ顔でバーバ・ヤーガ(民話に登場するオバケの一種)について語る場面は、トレイ・パーカー監督作『オーガズモ』(97年)に登場する究極の出オチキャラ、サンチョへのオマージュとなっている……ワケないか)。

1作目でスコットのヒーロー研修課程の裏方に徹していたホープが、今回はスーパーヒロイン=ワスプへと昇格。しかも彼女、アントマンの手を借りずとも滅法強いしカッコ良いため、FBIの監視を誤魔化しながら遠慮気味に行動しなければならないスコットのヒーロー的立場は結構ビミョーだ。おまけに新アントマン・スーツは調整不足のせいでバグり気味、デタラメに巨大化と縮小化を繰り返すサマはかなりズッコケ度が高い。しかし、他のスーパーヒーローたちが「フルチン写真流出で引退に追い込まれるアイドル」的なスタンスだとするならば、アントマンは「不祥事でさえ芸の糧にしてしまうコメディアン」にも似た特殊な立ち位置にいる。着地のポーズがキマらなくても、任務中に過労で卒倒しても、ポール・ラッドが演じるアントマンならOK。50歳を目前にして、いよいよ磨きがかかってきたラッドの「華の無い顔つき」が活きている。

雰囲気は緩くとも、見せ場は随所に用意され、退屈とは無縁。カーチェイス、インナースペース大冒険、偏屈者が愛を再発見するハート・ウォーミングな瞬間等々に舌鼓を打ち、あとは「ご馳走様でした」の挨拶を残すのみかと思われた瞬間、世界のどこかで誰かが鳴らした指パッチンの大アフターマス(余波)が、トドメとばかりにドバっと押し寄せてくる。「エッ、ここで終わるんスか!?」……プロジェクト始動から10年目を迎えたマーベルの、この引っ張りの巧さ。毎度のことながら脱帽モノでございます。

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